電気工事の現場では、感電や墜落、工具の落下など、日常的な作業の中に重大なリスクが潜んでいます。実際に発生した作業事故の事例を振り返ることで、原因を正しく理解し、再発を防ぐための具体的な対策を考えることができます。本記事では、電気工事で起きやすい事故の種類とその背景、そして現場の安全を守るために欠かせない防止策をわかりやすく解説します。

電気工事で発生しやすい作業事故の種類
感電事故 ― 通電確認不足や絶縁不良
墜落事故 ― 脚立・足場からの転落
工具・資材の落下事故
最近身近で発生した作業事故の事例
数人で配線工事を行っていた際、脚立に乗って作業していた作業員がバランスを崩し転落しました。
すぐに救急車で搬送され、意識は回復したものの、下半身が不随となる重大な後遺障害が残りました。
この事故は「脚立作業の安全確認不足」や「複数人での作業時の声かけ・補助不足」が背景にあると考えられます。
電気工事における高所作業は日常的に行われるため、誰にでも起こり得る事故です。

なぜこのような事故がおこったのか
1. 脚立使用時の基本ルールが徹底されていなかった
- 脚立の角度や設置場所が不安定だった可能性
- 天板や最上段に立って作業していた
- 足場固定や転倒防止措置が不十分
2. 複数人作業時の声かけ・補助不足
- 周囲の作業員が脚立を支える、声をかけるといった補助がなかった
- 同時に複数人が近くで作業し、注意が分散していた
3. 「慣れ」による安全意識の低下
- 高所作業が日常化しているため「大丈夫だろう」という油断が生まれた
- 危険予知活動(KY活動)が形骸化していた可能性
4. 安全装備の未使用
- フルハーネスや安全帯を使用していなかった
- 保護具の着用が「高所作業車」では徹底されても、脚立作業では軽視されがち
私が思うこと
現場では「最低限の人数」で作業を回すことが常態化し、
- 脚立に乗っている作業員を支える人がいない
- 周囲の安全確認や声かけをする人がいない
- 作業の進行だけが優先され、安全管理が後回しになる
といった状況が生まれやすくなります。 結果として、誰も全体を見ていないまま作業が進行し、事故が起きても防げないという構造的なリスクが存在します。
安全を守るために必要な体制づくり
1. 管理者・監督者の配置
- 作業全体を俯瞰し、危険箇所をチェックする人を必ず置く
- 脚立や高所作業時には「支える人」「声をかける人」を明確に役割分担
2. 人員配置の適正化
- 「最低限の人数」での作業を避け、補助者を確保
- 作業効率よりも安全確保を優先する体制を整える
3. 声かけ・合図のルール化
- 複数人作業では「上に上がります」「支えます」などの声かけを徹底
- 作業開始・終了時の合図を統一し、意思疎通のズレを防ぐ
4. 定期的な安全教育と訓練
- 新人だけでなくベテランも含めた安全講習を定期的に実施
- ヒヤリハット事例を共有し、現場での再発防止に活かす
5. 作業環境の整備
- 脚立や足場の点検を日常化
- 照明・足場・通路の安全を確保し、事故リスクを減らす
まとめ
今回の脚立からの転落事故では、作業員は一時的に下半身不随となる重大な後遺障害を負いました。 幸いにも、リハビリを重ねることで時間の経過とともに回復する方向とのことです。
この事例は、「人員不足での作業」「声かけや補助の欠如」「管理者不在」といった現場の体制的な問題が重なった結果、誰にでも起こり得る事故として示唆に富んでいます。
電気工事に限らず、日常的な高所作業では「安全確認を省略しない」「補助者を配置する」「全体を見守る管理者を置く」ことが、事故を防ぐ最も確実な方法です。
安全は効率よりも優先されるべきもの。 一人ひとりの意識と、組織としての体制づくりが、現場の未来を守ります。
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